それでは以下の二平方和の定理を証明していきます。
素数$p$があるとする。この$p$が2つの整数$a$、$b$を用いて$p=a^2+b^2$と書けるための必要十分条件は、$p\equiv3\ (mod\ 4)$でないこと、つまり$p=2$もしくは$p\equiv1\ (mod\ 4)$であることである。
証明の大枠
では証明をしていきたいと思います。全体の流れとしては
$p=a^2+b^2$と書ける。
$\overset{(1)}{\Longleftrightarrow}$$p$は$\mathbb{Z}[i]$の中で素元でない。
$\Longleftrightarrow$$\mathbb{Z}[i]/(p)$が体ではない。
$\Longleftrightarrow$$\mathbb{Z}[i]/(p)\simeq\mathbb{Z}[x]/(p,\ x^2+1)\simeq(\mathbb{Z}/p\mathbb{Z})[x]/(x^2+1)$が体ではない。
$\Longleftrightarrow$$x^2+1$は$(\mathbb{Z}/p\mathbb{Z})[x]$の中で素元でない。
$\overset{(2)}{\Longleftrightarrow}$$p=2$もしくは$p\equiv1\ (mod\ 4)$
となります。途中括弧付けしていない$\Leftrightarrow$は、前回までで(なんとなく)触れてきたものです。
括弧付けした部分をひとつづつ以下で証明していきます。
(1)の証明
「$p=a^2+b^2\Longrightarrow$$p$は$\mathbb{Z}[i]$の中で素元でない。」:
$p=a^2+b^2=(a+bi)(a-bi)$、$a\pm bi\in\mathbb{Z}[i]$より、$\mathbb{Z}[i]$の中で素元でない。
「$p=a^2+b^2\Longleftarrow$$p$は$\mathbb{Z}[i]$の中で素元でない。」:
$p$が$a+bi$という元を因数として持つとする。ただし$p$は整数環で素数ゆえ、$b$は0でない。同様に、$a$もゼロでない。
\begin{align}
p=(a+bi)(\cdots)
\end{align}
このとき、両辺の複素共役をとって、$a-bi$も因数に持つことが分かる。よって
\begin{align}
p=(a+bi)(a-bi)(\cdots)=(a^2+b^2)(\cdots)
\end{align}
これは、整数の(素)因数分解となっている。$p$は1か$p$しか素因数を持たなく、また$a^2+b^2>1$より、$p=a^2+b^2$である。よって証明された。
(2)の証明
(2)の証明をします。
$x^2+1$が$(\mathbb{Z}/p\mathbb{Z})[x]$の中で素元でないということは、
\begin{align}
x^2+1\equiv0\ (mod\ p)
\end{align}
の解$x_1$、$x_2$を使って
\begin{align}
x^2+1\equiv(x-x_1)(x-x_2)\ (mod\ p)
\end{align}
と因数分解できることを意味します。$p=2$であれば
\begin{align}
x^2+1\equiv(x-1)(x-1)\ (mod\ 2)
\end{align}
となり因数分解できます。$p$がこの値以外の時、このような$x_1$,$x_2$があるかどうか調べます。これらは
\begin{align}
x^2+1&\equiv0\ (mod\ p)\\
x^2&\equiv-1\ (mod\ p)\\
x^4&\equiv1\ (mod\ p)\\
\end{align}
となるので、4乗して初めて$1$になる、つまり$(\mathbb{Z}/p\mathbb{Z})^{\times}$において位数が4の元です。このような元が存在できるためには、$|(\mathbb{Z}/p\mathbb{Z})^{\times}|=p-1$が4の倍数であることが必要十分でした。(その1参照)よって$x^2+1$が$(\mathbb{Z}/p\mathbb{Z})[x]$の中で素元でないための必要十分条件は$p=2$もしくは$p\equiv1\ (mod\ 4)$です。
以上で、2平方和の定理が証明できました。
次回は、合成数について、$a^2+b^2$の形で書けるためにはどのような条件があるかを調べていきます。