前回(こちら)までは、素数$p$について$p=a^2+b^2$と書ける条件を求めました。今度は合成数$n$について、$n=a^2+b^2$と書ける条件を求めます。この時は以下のようになります。
素数$n$があるとする。これが
\begin{align}
n=p_1p_2\cdots p_n (p_1、p_2、\cdots p_nはすべて素数)
\end{align}
と素因数分解されるとします。この時、
「整数$n$がある整数$a$、$b$を用いて$n=a^2+b^2$の形で書ける。」
$\Leftrightarrow$「すべての素数$p_1$、$p_2$、$\cdots p_n$について、それぞれ$p_i=2$もしくは$p_i$を4で割った余りが1である。」
定理の「$\Leftarrow$」側の証明
ここでは「」を示していきます。
簡単のため合成数$n$が素因数分解で2つの素数のみ因子として持つ場合($n=p_1p_2$)を考えます。(3つ以上のときも、以下の方法を繰り返して得られる。)
このとき
\begin{align}
p_1&=a_1^2+b_1^2\\
p_2&=a_2^2+b_2^2\\
\end{align}
と表せるとします。このとき
\begin{align}
n&=p_1p_2\\
&=(a_1^2+b_1^2)(a_2^2+b_2^2)\\
&=(a_1a_2)^2+(b_1b_2)^2+(a_1b_2)^2+(b_1a_2)^2\\
&=(a_1a_2+b_1b_2)^2+(a_1b_2-b_1a_2)^2\\
\end{align}
となり、$n$は2つの整数$a_1a_2+b_1b_2$、$a_1b_2-b_1a_2$の二乗和で書けます。よって示せました。
定理の「$\Rightarrow$」側の証明
次は、その逆「」を証明していきます。ある整数が$p=a^2+b^2$の形で表されているとして、$n$が$p$を素因数に持つと仮定します。(ただし、$p$は$4で割って3余る$)そうして矛盾が出てくることを示します。:$n=pm$
\begin{align}
pm=a^2+b^2
\end{align}
まず、$a$が$p$の倍数とすると$b$も$p$の倍数であり、そうすると式全体を$p$で割れてしまいます。
\begin{align}
pm&=(a’p)^2+(b’p)^2=p^2(a’^2+b’^2)\\
m&=p(a’^2+b’^2)\\
\end{align}
よってより小さい数の議論に収束するので、$a$を「$p$の倍数でない」と仮定して議論して問題ないです。よってこの時、$b$も$p$の倍数ではないです。$pm=a^2+b^2$全体を、$p$で割った余り(mod)で考えると
\begin{align}
0\equiv a^2+b^2\ (mod\ 4)
\end{align}
これは$\mathbb{Z}/p\mathbb{Z}$で考えていることになりますが、$a$、$b$は0ではなく、また$\mathbb{Z}/p\mathbb{Z}$は体なので、$a$には乗法の逆元$a^{-1}$($a(a^{-1})\equiv 1\ (mod\ p)$)があります。それを両辺にかけると、
\begin{align}
0&\equiv 1+(a^{-1}b)^2\ (mod\ 4)\\
(a^{-1}b)^2&\equiv -1\ (mod\ 4)
\end{align}
よって$a^{-1}b$は位数4の元です。このような元があるためには$|(\mathbb{Z}/p\mathbb{Z})^{\times}|=p-1$が4の倍数でないといけないので$p$が4で割って3余る数ということに矛盾する。
よって、$n$の各素因数は$p=2$か$p\equiv 1\ (mod\ 4)$出ないといけません。これによってすべて証明できました。
(こちらの証明は、Wikipediaの「二個の平方数の和」に詳しく載っていたので、参考にいたしました。)
マス目に書ける正方形の面積に戻って
マス目上に書ける正方形その1で、面積が1、2、4、5、8、の正方形は格子点を結んで書けることが分かりました。これと、二平方和の定理を比較してみます。
二平方和(正方形を描けるか) | 素因数分解 | 素因数に$4m+3$型のものははるか | |
---|---|---|---|
1 | $1^2+0^2$ | (1) | |
2 | $1^2+1^2$ | $2^1$ | |
3 | × | $3^1$ | 3がある |
4 | $2^2+0^2$ | $2^2$ | |
5 | $2^2+1^2$ | $5^1$ | |
6 | × | $2^1\cdot3^1$ | 3がある |
7 | × | $7^1$ | 7がある |
8 | $2^2+2^2$ | $2^3$ | |
9 | $3^2+0^2$ | $3^2$ | |
10 | $3^2+1^2$ | $2^1\cdot5^1$ | |
11 | × | $11^1$ | 11がある |
12 | × | $2^2\cdot3^1$ | 3がある |
13 | $2^2+3^2$ | $13^1$ | |
14 | × | $2\cdot7$ | 7がある |
15 | × | $3^1\cdot5^1$ | 3がある |
16 | $4^2$ | $2^4$ | |
17 | $4^2+1^2$ | $17^1$ | |
18 | $3^2+3^2$ | $2^1\cdot3^2$ | |
19 | × | $19^1$ | 19がある |
20 | $4^2+2^2$ | $2^2\cdot5^1$ |
よってここまでで、2つの平方数の和で書ける(つまりマス目上に正方形をかける)ものは、素因数に$4m+3$と表せるような素数を持たないことが確認できました。